今日の演目は、『心中宵庚申』(しんじゅうよいごうしん)。
“心中”、といえば、近松門左衛門だよね!
この話も、近松門左衛門の作品で、実話をもとにして書かれた話らしい。
八百屋の養子となった元武士の半兵衛と嫁のお千代。
だけど、姑がお千代を嫌っていて、半兵衛が留守の間に追い出しちゃう。
そんなことを知らずに嫁実家を尋ねた半兵衛が驚くんだけど、
嫁実家の人たちは、半兵衛が追い出したと思ってて、
半兵衛を放置して、勝手に話したりしてるの。
嫁実家の人たちの話を聞いて訳がわかった半兵衛は、
お千代を連れて家に帰るんだけど、
姑が”嫁と離縁しないなら死ぬよ!”なんていって離縁を迫る。
養子として育ててもらった母の頼みを断れない半兵衛は、
一応お千代を離縁するのだけど、夜、家を抜け出し、
お千代と二人で生玉神社へ行って、心中する、という話。
そりゃね、育ててもらった恩もあるけど、どう見ても姑があかんやん。
なのに、”姑のせい”と世間に思われないように自分を悪者にしようとする。
いままでもいろんな心中や殺しの舞台を見てきたけど、
文楽の世界では、親に対する絶対的な尊敬みたいなものがある気がする。
夏祭浪花鑑でも、どんな悪い親でも我慢しつづけるしね。
悪い・良い、よりも、親への恩(孝行)が大事、という感覚なんだろう。
現代とは優先順位が違うんだろうなぁ。
現代だったら、親だろうが何だろうが、悪いもんは悪い、ってなるもん。
でもさ、心中する覚悟があるなら、家を出ればいいと思うんだよね。
だって、心中するんだから結局は家も親も捨てるじゃないか。
わざわざ死ななくても、どっか遠くへ駆け落ちすればいいんじゃない?
ま、江戸時代って、確か、戸籍というか、住んでるところを動けない、
という縛りみたいなものがあったらしいので、難しいかもしれないけど、
誰一人駆け落ちしなかったわけじゃないだろうしね。
・・・なんて、芝居後に女子3人で感想を述べ合ってた。
一緒に見たYさん(♂)は、”それ言ったらあかんわ”って言ってたけど、
女子3人は、同じ感想だった( ̄ー ̄)ニヤリッ
そういえば、セリフで”今日は宵庚申”だからちょうどいい”
みたいな会話がされていた。
心中する日が宵庚申なので、都合がいいということのようなのだけど、
宵庚申って、なんだ?と思って調べてみたら、
庚申の日は、”庚申信仰“に基づくお祭りの日なんだそうだ。
庚申の日の夜は、寝ないで神仏を祀って、慎ましく過ごすんだって。
江戸時代に一番栄えた信仰の一つだったらしい。
・・・なるほろ。
夜遅くてもみんな神社仏閣にお参りに行ったりするから、
夜中にうろうろしててもバレにくい、ということなんだろう。
こういうのを知ると、昔は神仏がもっと近くにあったんだなぁ、と思うわ。
なんとなくだけど、純粋でシンプルなカンジがするなぁ。
ちなみに、ここ最近、ずっと江戸時代の市井モノばかり読んでるから、
頭がその環境に慣れてるみたいで、すっと話に入っていけた気がする。
特に今回の文楽は、世話物で近松門左衛門だったから、余計かな。
いやー、今回もなかなか面白かったわ。次も楽しみ。
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