観に行ったのは、この映画。
『大鹿村騒動記』
つい先日なくなってしまった原田芳雄の遺作となった作品だ。
ストーリーは長野県の大鹿村で300年続く村人歌舞伎の話。
鹿料理を出す飲食店を営む善(原田芳雄)は、村人歌舞伎の役者。
本番間近に、幼なじみと駆け落ちした女房と、その幼なじみが、帰ってくる。
なんと、女房が認知証になったから、面倒見れないと言って連れてきたのだ。
帰ってきた女房と幼なじみと善。この3人の雰囲気が何だかよかった。
普通なら、裏切った幼なじみと女房をたたき出すとかしそうなのに、
認知証ということもあるからか、無理矢理たたき出したりしないし、
なんだかいつのまにか幼なじみと呑んでたりするのだ。
昔からずっと一緒にいたという過去があるからこそ、
裏切ったとしても、3人揃えば自然なかかわりかたが染みついてる。
その関係性は、小さい村で育ったという閉鎖性にもつながってるのかも。
この3人のつながりがすごくほわっとして、よかった。
・・・なんだけど!
その他にもたくさんのベテラン俳優さんが出てるからなのか、
この3人の話以外のストーリーがテキトー過ぎる・・・。
なんで今その話する必要があるねん、っていろんなセリフに思ったし、
とってつけたようなリニア新幹線の話だったり、性同一性障害の話だったり、
役者さんのセリフを作るためじゃないのかと思うような場面があったり。
“騒動記”らしくしたいがための、寄せ集めで思いつきみたいに見えた。
どうもその他のストーリーに必然性をまったく感じなかったんだよね・・・。
出てる役者さんたちはすごくうまい人たちばかりなのに。
もちろん描きたかった村人歌舞伎の本番は、結構じっくり描かれていたし、
コレをしたいからこそこの映画を撮ったのだ、と言うのはすごくわかった。
上演される『六千両後日文章 重忠館の段』の景清は、
潔くて、カッコよくて、なかなか面白い話だったけれど、
さすがベテラン俳優さんたちがやるからか、どうもうますぎるカンジ。
カッコよすぎる、というか、カッコつきすぎるというカンジがしたわ
本物の大鹿歌舞伎もこんなにうまいのかなぁ・・・。
そういえば、景清という名前に見覚え・聞き覚えがあった。
確か、文楽で見たはず!と思って調べてみたら、案の定、あった。
『孃景清八嶋日記』だわ。
あれは確かすでに景清は盲目になっていて、
娘が会いに来ても、景清は死んだと嘘を言って追い返す話だった。
そうだ、そうだ、そんな話だった。
最後に、つぶれた眼をカッと見開いて慟哭する景清がすごかったのだった。
大鹿歌舞伎でやっていた景清は、その眼を潰す時の話なわけね。
ネットで調べてみると、本物の大鹿歌舞伎で三味線を弾く人が出てたみたい。
・・・やっぱり。役者さんとは違って、モノホンだなぁと思ったんだよね。
文楽の太夫さんと三味線を1人でやっるカンジで、堂に入ってた!
ストーリーのつっこみはおいといて、大鹿歌舞伎はすごく楽しかった。
村人がやってるからこその、観客との一体感が、まさに娯楽だった。
ああ、マジモンの大鹿歌舞伎を見に行きたくなっちゃったよ。
それに、原田芳雄は、渋くて、本当にカッコよかったし、
コレが遺作とは思えないほど、ばりばりに活躍してた。
病気と闘ってたなんて、信じられないわ。
なくなってしまったのが信じられない。めっちゃ残念やわ。
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