ストーリーは、野良猫たちがずっとお腹をすかせている。
そこへ、遠くの湖には食べきれないほどの大きな魚がいるという話を聞いて、
みんなと一緒に旅に出る・・・という話なのだけど、
登場人物は全員ネコ!見事にネコのみ!・・・だから、登場ネコって感じ。
しかも、全員男。十一匹の”オス猫”がわいわいやってる芝居なのだ。
これがまぁ、面白いのよねー。みんな個性が強くてさ!
結構芸も細かくて、”手”じゃなくて”前足”とか言ったりする。
ストーリーは、思いっきり絵本的なファンタジーの世界なのだけど、
ちょっとしたエピソードや、ストーリーに、
猫の世界といいながら、人間を風刺したようなセリフや情景があったりする。
たまにチクッと来るような、ちょっと辛子が効いた芝居だった。
普通の絵本なら、大きな魚を捕まえて、お腹いっぱい魚を食べて、
猫たちは湖のほとりで仲良く暮らしました、でおしまいだろうけど、
そこで終わるわけじゃなくて、まだ続きがあったのだ。
しかもラストが壮絶すぎる・・・これはすごい。
なんだか、井上ひさしって、こういう芝居を書く人だったんだなぁと思った。
なんだか圧倒されたまま終わったドラマシティをあとにして、
梅田でちょっとうろうろしようかと思ったんだけど、やたら人が多くて。
人が多すぎるのが嫌になったので、すぐに家に帰ってきた。
コンビニで買ったサラダ巻きを食べつつ、録画していたブラタモリを見たり、
スーパーで買い物してシチューを作ったりしてから、
また夜、家を出て、今度は日本橋に自転車で向かった。
今日は、芝居のはしごだったのだ。
観に行ったのは、KUTO-10の『楽園!』だった。
こっちの話は、ネコとは全く違う、異様にリアルな人間の話だった。
出てくる人出てくる人みんな、何かにすがって、何かを信じてる。
その様は、まるで新興宗教のような怪しさと、脆さがある。
みんながそれぞれ”楽園”を求めて、楽園に突き進んでいく。
それは、ひとそれぞれ全然違う”楽園”なのだけど、ものすごく脆いものだ。
何かにすがらないと生きていけないのが人間なのか、なんて思ったり。
それが新興宗教ほど怪しい物じゃなくても、
趣味だったり、自信だったり、地位だったり、お金だったり。
結構普通の生活でも、きっと何かにすがって生きてるんだと思う。
それを全部捨てて生きることはできないんだろうな。
でも、すがり過ぎたら、自分をがんじがらめにしてしまう気がした。
芝居のはしごを終えて家に帰ってのんびりしてたら、ふと気づいた。
そういえば、昼に見た猫たちも、楽園を求めて湖まで旅をしていた。
お腹がすかない楽園。腹いっぱい美味しい魚が食べられる楽園。
夜に見た人たちも、みんな楽園を求めてた。
楽園って、何だろう。
望みが全て叶えられる場所?何も考えなくていい場所?
それとも、南の楽園?
人によって違うと言われればそれまでだけど、
それぞれ違うものをイメージしてるとしても、
楽園という言葉が持つ、甘美なイメージは、どこからくるんだろうなぁ。
“楽園”って不思議な存在だなぁ。
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